沈下修正工事とは

沈下修正とは、地盤が沈んだ建物の傾きを修正することです。地盤沈下や地盤不良を起こしてしまった場合は、基礎から持ち上げて正常な状態に持ち上げる施工を行います。

建物が沈下したまま放置すると、水道管やガス管などの生活に必要な埋設管が破損してしまいます。建物が傾いたまま居住は水道やガスが止まりやすくなるため、通常の生活水準を保つことは難しくなるでしょう。

他には吐き気や頭痛など、体調不良に陥りやすくなる点に注意が必要です。人間は傾きによってバランスを失うと、平衡感覚に狂いが生じてしまい水平感覚を保てなくなります。

ちなみに建物は一度沈下してしまうと元の高さまで戻らないので、水平な状態に戻すためには沈下修正の工事が必要になります。

沈下修正が必要な建物の特徴は?

沈下修正が必要な建物の特徴は、屋内と屋外から以下の特徴で判断しましょう。

屋内

  • ドア・窓がピッタリと閉まらない
  • 床が傾いていると感じる
  • 原因不明の吐き気や頭痛など起こす

まずは生活している中で違和感を持つことが重要です。建物が傾いている場合はドアや窓の開閉がぎこちなくなり、カギを閉められなくなることがあります。

建物が傾いている場合は、ビー玉などの球体を転がしてみましょう。自然に転がるときは、地盤沈下が起きている可能性が高いです。

さらに原因不明の体調不良にも注意が必要です。家族でお住まいの場合は複数の居住者に吐き気やめまいなどの体調不良が起こる際は、建物が傾いている可能性が高くなります。また精神状態が不安定になりやすく、不安感や理由もなく焦りが生じることがあります。

屋外

  • 外壁にひび割れがある
  • 床が傾いていると感じる
  • ガス管や水道管などが破損する

建物にひび割れが起こっている場合は、地番沈下で傾いたことが原因である可能性が高いです。建物以外にも、玄関や土地内のコンクリートなどにひび割れが起こる場合があります。

他にはガス管や水道管などの配管が破損した場合も、地盤沈下を疑いましょう。沈下することで生活そのものに大きく影響するため、少しでも違和感を持った場合は修理業者に相談することをおすすめします。

沈下修正工事の種類

沈下修正工事の種類は以下の3つです。

  • 鋼管杭圧入工法(こうかんくいあつにゅうこうほう)
  • 耐圧版工法(たいあつばんこうほう)
  • 薬液注入工事(やくえきちゅうにゅうこうほう)

建物が立っている地盤によって、適切な工事の種類を変えます。安定した地盤までの深さは土地によって異なり、地盤まで深さによって工期と施工の費用が変わります。

そのため事前に土地の調査を行ってから、最適な工事の方法を考えましょう。業者によって施工方法が異なる場合は、地盤の深さと施工方法の理由についての質問することをおすすめします。

鋼管杭圧入工法

鋼管杭圧入工法(こうかんくいあつにゅうこうほう)とは、安定した地盤と建物の間に鋼管杭を挿入し、圧入させる力で建物を修正する方法です。

軟弱な地盤までの深さがある場合でも対応でき、建物の沈下の修正だけなく、再沈下の予防になります。

工事の間は引っ越しする必要がなく、日常生活に支障がないまま工事を進めることが可能です。また騒音や振動などが少なく、土埃なども発生しない点も鋼管杭圧入工法の大きなメリットといえます。

ただし工期が1ヶ月以上かかることが多く、他の手法に比べて長期間の工事になってしまいます。さらに費用が高額になりやすく、業者によって違いはありますが500万円以上になる場合があります。

耐圧版工法

耐圧版工法(たいあつばんこうほう)は、安定基盤までの深さがない場合に用いる沈下修正の手法です。基礎下端から1メートル程度の地盤までジャッキを挿入し、圧入させて建物の傾きを修正します。

安定基盤まで深さがないため、鋼管杭圧入工法と比べて安価に工事することが可能です。約450万円前後の費用で施工できます。また工期も短く、約10日で終了します。

しかし耐圧版工法は安定した地盤が近いことが条件なので、どの建物でも施工できるわけではありません。事前に地盤を調査して、施工可能な土地を確認してから工事を始めましょう。

ちなみに施工業者によっては、コンクリートブロックを積んだだけで安定した地盤にして施工期間を短くする場合があるので注意が必要です。

薬液注入工事

薬液注入工事(やくえきちゅうにゅうこうほう)とは、地盤に薬液を注入することで透水性を減少させて地盤の強化を行う手法です。

地盤の透水性とは、土の水の流れやすさを指します。透水性が大きい土地は地盤が緩くなり、透水性が小さい土地は地盤が固くなります。

スキマの多い地盤や障害物が混じっている場合に有効な手法で、地表面下3m程度の深さまでの対応が可能です。

工期は1週間程度で終了し、施工の費用は約450万円です。ちなみに薬剤を投入することによる環境汚染の影響はありません。比較的狭い部分の地盤を固めやすいうえに、振動や騒音を出さない施工が可能になります。

ただし薬液が十分浸透せずに、未固結部分から出水事故が発生する場合があります。地盤によって危険性が高まるので十分な調査が必要です。